LAMB/ラム(2022)

年末年始で読んだ本、観た映画がいくつかある。その中で面白かったものだけ紹介してみる。

LAMB/ラム(2022)

年末年始にAmazonプライムで無料で観た映画の1つがコレ。LAMB/ラム。日本語で子羊って意味。

製作はA24という会社で、ミッドサマーやへレディタリーという風変わりな映画を製作した会社。どちらもとても好きな作品で、この会社が新作を出すという情報を知った時には楽しみだなーって思ってたんだけど、思い出した時にはどこも上映が終わってたという。

以前と違い、ストリーミングで自由に観れるし、コロナの件もあるしで、最近は映画館にめっきり行かなくなったので、なんかこういう見逃しがすごく多くなった。

今回はたまたまプライム特典の無料映画一覧の中にこのタイトルを観つけた。しかも吹き替え。運が良かった。観始めたのは深夜0時だが、本当にあっという間だった。月並みだが、とても興味深い作品だったと思う。下は公式サイトへのリンク。

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概略

最初、アリ・アスター監督の作品だと勘違いしていたが、本作の監督はValdimar Jóhannsson(ヴァルディミール ヨハンソン)。44歳。若手ではないようだけど、本作がデビュー作とのこと。

主演の女性はノオミ・ラパス。残念ながら、彼女の出演作はプロメテウスくらいしか観ていない。プロメテウス…公開当時に映画館で字幕版を鑑賞済みだったが、数ヶ月前にディズニープラスの映画リストの中に吹き替え版があったので、ひさしぶりに観てみた。あまりの吹き替えの酷さに途中でリタイア。ここまで酷いのはじつに珍しい。

話がズレてしまったが、ノオミ・ラパスがミレニアム三部作に出演されていることは知っていた。ただ、私の中ではリスベット・サランデルはルーニー・マーラのイメージが強すぎて、あまり観たいって気にならなかった。でも、今回あらためて良い女優さんだとわかったので、近々ミレニアム三部作の方も観てみようと思う。他の出演者は、夫役の男性と夫の弟役の男性の二人。弟の悪友役の3人。ほとんどのシーンが、夫婦と弟そして子供になる。

ジャンルはなんだろうな?ヒューマンドラマ?ファンタジー?ある意味ホラーでもある。わからん。時間は106分。個人的にはもう少し長くてもいいと思ったが。音楽はあまり流れない。静かな映画といった印象。

ネット上の評判

ネットでは、賛否両論分かれてる様子。

  • ”観た時間がもったいなかった”
  • ”退屈すぎる”
  • ”子供がキモい”
  • ”あっけなかった”

こういう意見が多い。

まあ、確かにラストはあっけなかったなと思う。ただ、それまでの内容は決してつまらなくはないし、退屈だとも思わなかった。子供はキモいというよりも、シュールだと私は感じた。

あと、他の観た人のレビューなんかを読んでいると、宗教的な話とか寓話とか書かれていたりするけど、どうかな。

キリスト教的な何かしらの意味が隠されているとか言われても、私はキリスト教徒ではない。無神論者に近い、仏教徒。もし詳細に説明されたところで、わかったようなわからないようなで終わるだろう。バフォメットにからめて語っている人もいるみたいだけど、そもそもバフォメットってヤギだったはず。この映画はそこまで深く考えなくても、考察をしなくても、十分面白い映画だったと思う。観終わって、さらに深く知りたければ、考察サイトでより深く知ればいいと思う。

あらましと感想

ネタバレになるかもしれないので注意。

物語はヤギ達が住む小屋。吹雪の夜。ただならぬ気配に羊たちの間に緊張が走るところから始まる。

なにかに見られているような、なにかが近くにいるような気配。ここでは匂わせだけで終わり、場面が切り替わる。※このシーンは後の伏線にはなっている

その後は、この羊たちを世話・管理している中年の夫婦たちの生活が描かれる。仲が悪いわけではないようだけど、どことなくぎこちない夫婦。子供の様子は見えない。ペットは犬と猫が一匹ずつ。おそらく子供がいない夫婦だろう。

お互い協力しながら、牧場を運営していた二人だったけど、ある日のこと一頭の羊の出産に立ち会う。そこで夫婦が観たものは…というのがこの映画のお話。

予告編でもわかってたらしいので言うと、その羊の子供は半分(頭、首まわり、片手)が羊で、それ以外が人間という半人半獣の生き物だったというのが、後々明らかになる。(しばらくは羊の頭だけ出す焦らしプレイ)

夫婦は、その子を自分の子として育て始め、家の中の空気が少しづつ明るく変わり始める。

ここでは深くはふれないが、個人的に以下の点が興味深かったと思う。

  • 子を失った親の悲哀に満ち乾いたその後の人生
  • 子を失う辛さがわかっているはずなのに、母羊の悲しみが理解できない狂気の女
  • 因果応報、自分で蒔いた種できれいに締めくくるストーリー

あと、この映画は脚本や演出が良いのもあるんだろうけど、やはり女優(ノオミ・ラパス)さんの演技が良い。自然な演技、生活感。羊のお産を手伝っているシーンもあるが、違和感がない。

私は子羊や子ヤギがかわいくて好きなので、よくYoutubeで海外の動画を観てるんだけど、お産を手伝う動画なんかもたまに見かけることがある。この映画のはそれらとなんら遜色ない。

最後まで観て気になったのが、超自然的な羊の父親の存在。あのような姿も彼が最初ではないかもしれないし、今までもずっと同じような営みを繰り返してきたんじゃないかと思う。

もしそうだとしたら、半人半獣の子が産まれた場合には、その父親が必ず迎えにくるとかいう伝承だったり伝説、言い伝えといったものがあるんじゃないかと思う。そしてああいった存在は、その地方のヌシだったり土着の神だったりして信仰されているのではないかと。

この映画にはそういった伝承の語り部となる老人が一切出てこないし、いつからこの夫婦はこの牧場を経営しているのか、親から受け継いだのじゃないのかというのが不明。また、他に同じような生業の仲間はいないのかっていうのが少し気になった。

もし仮に、そういう伝承を知っていれば、あのような行為には走らなかったのではないかなと思うし、いっときの間だけその羊の子を自分の子供として育てたとしても、母羊を殺しさえしていなければ、夫が殺されることもなかったのではないかと思う。

また、半人半獣の子の存在。あの夫婦の目に映っていた姿と、夫の弟(途中出てくる)の目に映っていた姿は同じだったのか。この映画はファンタジーの世界ではなくリアルの世界のはずなんだけど、普通に食事のテーブルに半人半獣の子供が座ってきたら、私なら泡吹いて気絶しそうだ。

ちなみに、この映画自体はある意味ハッピーエンドだと思う。もちろん、妻目線で見れば夫が死に子供はいなくなってバッドエンドだろうけど、あの子は一人では生きていくことは困難だったろうし、自分の存在に疑問を感じていた。でもこれからは、本当の父親と自分の人生をこれから生きていける。なにより独占したいというエゴにより、子の生みの親を始末した狂気の女から開放された。

個人的評価

満足度 ★★★★
オススメ度 ★★★☆

謎めいた映画や静かな映画を楽しめるような人には受けると思う。万人受けはしない。おしまい。

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